指揮者になる法⑭「Mysterien 神秘の扉」

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メンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」のCDを
今年の春リリースしたが
そこに出てくるモチーフの一つは
ドレスデン・アーメンだった。

最初にこの曲をウィーンで聴いたときの印象は
鮮烈だった。そしてスコアを確認したが
間違いなくあの、ワーグナーのオペラ、
「パルシファル」のモチーフとして用いられている音が
そっくりそのまま使われていた。

「どちらが先?」
「もちろんメンデルスゾーンさ。」

そう、メンデルスゾーンが宗教改革で用いた
このドレスデン・アーメンと呼ばれる音の動き。

一瞬神聖な瞬間が訪れる。

でもそれは私がワーグナーのパルシファルを
知っていたからなのか?
そこはよくわからない。

キリスト教の聖体拝領というのは
ミサの中で行われる非常に貴い儀式。

そこでFleisch und Blut
つまりキリストの肉と血を頂くシンボルとして
パンと葡萄酒が用意され、信仰者はこれを
週に一度ミサの終わりに頂くことになる。

私はウィーン滞在時代、よくシュテファン教会を
グラーベンに抜け、そこからユダヤ人街を通って
フランス語でミサをする11世紀に作られた教会に通った。

ここではグレゴリア聖歌の合唱が聴かれるからだ。

この教会で行われる神秘的な雰囲気のなかで
「音楽とは神秘だ」と確信していた。

それは昔からの思いだったが
ヨーロッパの地でそういった思いを強くしたのは
大きな教会で行われる典礼ではなく
こうしたミサの音の渦に包まれた時だった。

今から思えば私の宗教感覚というのは
不思議な変遷をたどっている。

家は仏教だが、カトリックの神父の影響も強く
またプロテスタントの洗礼を受けたものの
結果的に海外では禅の教えに傾倒し
最終的には日本で自然に包まれるなかで
神道のなかに自分の軸を見出した。

でも自分の宗教を特定することは無意味だと悟った
一番大きな理由は、音楽だった。

私は音楽にも宗教にもMysterien「神秘」を求める。
それは現象であり、雰囲気であり
何か大きな神聖なちからが生まれる瞬間でもある。

そういうものと出会うとき
Somthing great を感じた気になるのだ。
それで良いと思う。

伊勢神宮のちからは、その巨木にある。
立ち上がるエネルギーは
地から天に突き抜け
巨木の大群から発せられるオーラは
目がくらむほどだ。

それを宗教という、イカサマな括りで断じるのは
愚の骨頂というもの。

モーツァルトは下手にやると
ただの音になる。

だが素晴らしいバランスのなかで
生まれ出ずるオーラは本当に桃色に転ずる。
それはもう、神秘でしかない。

でも下手なモーツァルトは、駄作でしかない。
ベートーヴェンは誰がやってもベートーヴェン。
だからモーツァルトは天才なのだ。

メンデルスゾーンの生み出した世界は
世界を旅する詩人の絵心のようなもの。

彼の旅は「音の絵」だ。

シューベルトの冬の旅のような
グリルパルツァーを彷彿とさせる時代の産物ではなく
ゲーテに憧れ、出てみたものの
メンデルスゾーンに多くをもたらし、
ゲーテのイタリア紀行とは違って
それは思いのほか色彩に富んでいたのだ。

それこそがまさに彼の天才の所以。
そして至るところに神秘の歌がちりばめられる。
その感覚は他の作曲家にはなかったもの。

ワーグナーはマーラーと似て
東洋に傾倒したが
それは神秘というテーマのため。

その神秘を絵のように描くメンデルスゾーンから
借りて来たドレスデン・アーメンは
パルシファルで思わぬ功を奏した。

現実主義者だったワーグナーが
そのトリスタンでもタンホイザーでも成し得なかった
パルシファルにおける宗教性。

それはメンデルスゾーンの天才のちからを借りて
初めて生まれたものだったのかもしれない。

Nun achte wohl,
und lass' mich seh'n:

bist du ein Tor und rein,
welch' Wissen dir
auch mag beschieden sein.

Zum letzten Liebesmahle
gerüsutet Tag für Tag,

gleich ob zum letzten Male
es heut' ihn letzten mag,

wer guter Tat sich feut,
ihm sei das Mahl erneut:

der Labung darf er nah'n,
die hehrste Gab' empfah'n.

Den sündigen Welten,
mit tausend Schmerzen,
wie einst sein Blut geflossen,

dem Erlösungshelden
sei nun mit freudigem Herzen
mein Blut vergossen:

der Leib,
den Er zur Sühn' uns bot,
er leb' in uns durch seinen Tod.

Der Glaube lebt;
die Taube schwebt,
des Heilands holder Bote:

der für euch fließt,
des Weines genießt
und nehmet vom Lebensbrote!
(Parsifal から)
そのうち、この訳を書こうと思う。
今は少し置いておかないと。

素敵な一日を!
横浜の自宅から
村中大祐

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